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本コラムでは、金融庁が2026年7月3日に公表した2025年12月末時点の都道府県別・年齢階層別NISA口座開設状況(注1)のデータを用い、直近半年間における普及トレンドの変化を分析した。全国的にNISAの普及が進展する中、これまで牽引役であった大都市圏や若年層の動向に加え、新たな2つの潮流が確認された。
 
第一に、京都府や静岡県など一部の大都市圏周辺エリアや地方圏において、大都市圏を凌ぐ勢いで急速なキャッチアップが進んでいる。第二に、普及の中心層が若年層から50代・60代を中心とするプレシニア・シニア層へと波及している。大都市圏の若者から始まった「貯蓄から投資へ」の波が、地方の幅広い世代へと裾野を広げつつある。

1. 都道府県別にみるNISA口座開設率の変化

2025年12月末時点の都道府県別NISA口座開設状況(図表1)を見ると、全国的に普及が着実に進展しているものの、地域間に存在する大きな較差は依然として維持されていることがわかる。
 
口座開設率が最も高いのは東京都の33.8%であり、最も低い青森県の15.9%と比較すると、半年が経過した現在でも依然として2倍以上の開きが存在している。2025年6月末時点での東京都(31.9%)と青森県(15.0%)の差は16.9%ポイントであったが、12月末時点ではその差が17.9%ポイントへと1.0%ポイント拡大しており、最上位と最下位の間の較差は縮小するどころか、わずかに広がる結果となった。下位グループの顔ぶれにも大きな変化はなく、青森県に次いで岩手県(16.3%)、北海道(17.9%)と、北日本を中心とするエリアで普及が伸び悩む傾向が続いている。
 
一方で、上位陣の状況に目を向けると、6か月間という短期間でありながら、全体の水準の底上げや、いくつかの興味深い順位の入れ替わりが確認できる。まず、6月末時点では口座開設率が30%の大台を超えていたのは東京都のみであったが、今回の12月末時点では、神奈川県が31.0%、奈良県が30.4%となり、新たに2県が30%の大台を突破した。
 
順位の入れ替わりで最も注目すべきは京都府の躍進である。京都府の口座開設率は6月末時点の24.0%(全国16位)から12月末には27.9%へと急上昇し、全国7位タイにまで順位を大きく引き上げた。また、愛知県も25.8%(8位)から28.4%へと着実に伸ばし、6位に浮上している。これに対し、千葉県は26.4%(6位)から27.7%(9位)へ、大阪府は26.3%(7位)から27.9%(7位タイ)と他の上位陣に比べて伸びが穏やかであったため、相対的にポジションを譲る結果となった。短期間であるため全体の序列が完全に覆るような事態には至っていないものの、地域ごとの普及スピードには温度差が生じ始めている。
 
図表1 都道府県別 NISA口座開設率
  

2. 若年層からシニア層へと波及するNISA

次に、全国平均における年齢階層別の口座開設率の変化幅(図表2)を確認したい。NISAは2025年6月末から12月末までの半年間において、どの年代で最も普及が進んだのか。
 
図表2 年齢階層別 NISA口座開設率の変化幅(全国平均、2025年6月~12月)

これまでNISAの普及を強力に牽引してきたのは、将来の資産形成に対する関心が相対的に高い20代や30代の若年・現役世代であった。しかし、直近半年間の伸び幅を見ると、20代が2.1%ポイント、30代が2.0%ポイント、40代が1.9%ポイントと堅調な伸びを示している一方で、これら若年・中堅層の伸びを上回る勢いを見せているのが50代と60代である。
 
データによれば、50代の口座開設率の伸び幅は2.4%ポイント、60代も同じく2.4%ポイントに達しており、全年代の中で最も高い伸びを記録している。さらに、70代においても1.2%ポイントという着実な伸びを示している。
 
この結果は、NISAの活用を通じた資産形成の波が、これまでの中心であった若年層から、退職後の生活資金や老後の資産寿命を強く意識し始めるプレシニア層、さらにはシニア層へと確実に波及しつつあることを示している。政府の各種施策やメディアによる制度の認知度向上が、少し遅れる形で上の世代の投資行動を促すきっかけになり始めたのではないだろうか。

3. 地方圏の急進とそれを牽引するシニア層の動向

最後に、都道府県別・年齢階層別の口座開設率の変化幅(図表3)を掛け合わせて分析することで、この「シニア層への波及」が特定の地域で強く表れている実態を確認する。
 
この半年間で口座開設率の伸び幅が大きかった都道府県を見ると、トップは先述の通り順位を上げた京都府で、3.8%ポイントの上昇となった。次いで静岡県(2.9%ポイント)、愛知県(2.7%ポイント)、岐阜県(2.6%ポイント)、長野県(2.3%ポイント)、奈良県(2.2%ポイント)、広島県(2.2%ポイント)と続いている。一方、これまで普及のトップを走り続けてきた東京都の伸び幅も2.0%ポイントと全国平均(1.8%ポイント)を上回る堅調なペースを維持しているが、京都府や静岡県など一部の大都市圏周辺エリアや地方圏が、それをさらに凌ぐ勢いで急速にキャッチアップを進めている構図が確認できる。
 
これら伸び幅上位の府県について、どの年代がその伸びを牽引しているのかをブレイクダウンすると、前章で指摘した「シニア層の伸び」という全国的な傾向が、地方圏においてさらに明確に現れていることがわかる。
 
例えば、伸び幅トップの京都府では、20代(2.7%ポイント)や30代(3.1%ポイント)も高い伸びを示しているが、それ以上に40代が3.9%ポイント、50代が5.5%ポイント、60代に至っては6.4%ポイントという大きな伸びを示している。さらに京都府では70代でも4.1%ポイントの伸びを記録しており、プレシニア・シニア層が府全体の口座開設率を大きく押し上げている。
 
同様の傾向は、他の上位県でも共通して確認できる。静岡県では50代(4.1%ポイント)と60代(4.5%ポイント)が全体を牽引し、愛知県や岐阜県においても、50代や60代の伸びが3%台後半から4%台前半と、若年層の伸びを上回って突出している。
 
これらのデータは、これまで普及のトップ層に比べてNISAの利用が遅れていた地域において、子育てが一段落し、老後資金の準備がより現実的かつ喫緊の課題となる50代から60代にかけての層が、この半年間でNISAの活用へと動き出したことを示している。
 
図表3 都道府県別・年齢階層別 NISA口座開設率の変化幅(2025年6月~12月)

以上の最新データの分析から、直近半年間のNISA普及において2つの重要な潮流が確認された。1つ目は、東京都を中心とした大都市圏が引き続き堅調な伸びを維持する一方で、一部の大都市圏周辺エリアや地方圏がそれを上回る勢いで急速に普及ペースを上げていることである。2つ目は、普及を牽引する年代が若年層から50代や60代を中心とするプレシニア・シニア層へと波及していることである。
 
本シリーズのこれまでのコラム等(注2)では、30代や40代のライフステージに紐づく資金需要がNISA普及の強力な推進要因であると指摘してきた。しかし、直近半年間の動向は、大都市圏の若者から始まった「貯蓄から投資へ」の波が、地方の幅広い世代へと着実に裾野を広げつつあることを示している。今後のNISAの定着とさらなる普及に向けては、こうした「地方圏」および「シニア層」の動向が重要な指標になるのではないだろうか。
 

(注1)「NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について」(金融庁、2026年7月3日)

(注2)「初めて明らかになったNISA普及の地域別実態」(金融ITフォーカス2026年1月号)
NISA普及における地域間較差の要因分析」(データで読み解く金融ビジネスの潮流2026年1月27日)
金融クイズの得点にみる知識水準の決定要因分析」(データで読み解く金融ビジネスの潮流2026年2月13日)
東京都と青森県の比較に見るNISA普及較差の要因と職場における投資教育の意義」(データで読み解く金融ビジネスの潮流2026年3月23日)
NISA普及の地域間較差に関する構造的要因の定量分析」(金融ITフォーカス2026年4月号)
NISA普及における地域間較差の要因分析と政策的⽰唆」(2026年4月6日)

プロフィール

  • 金子 久のポートレート

    金子 久

    金融イノベーション研究部

    

    1988年入社、システムサイエンス部及び投資調査部にて株式の定量分析を担当。1995年より投資情報サービスの企画及び営業を担当。2000年より投資信託の評価やマーケット分析のためのデータベース構築、日本の資産運用ビジネスに関する調査、個人向け資産形成支援税制、投信に関する規制などを担当。その間2005年から1年間、野村ホールディングス経営企画部に出向し、アセットマネジメント部門の販路政策などを担当。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。