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数人のFOMC参加者が利上げを検討

7月8日に米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利の据え置きを全会一致で決めた6月16日~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。全体的には、物価上昇のリスクについて議論が活発になされており、金融政策は利上げ方向に傾いていることを印象付けるものとなった。

数人のFOMC参加者(A few participants)は、今回のFOMCで利上げを検討したと発言している。ただし、最終的には利上げの提案を見送った。

FOMCでは、先行きの経済環境と金融政策について、シナリオに分けた議論が行われた。ほとんどの参加者(Most participants)は、物価上昇率が低下し2%の目標値に達する見込みとなれば、政策金利を現在の水準で維持する、あるいは、いずれは引き下げるとした。

また、ほとんどの参加者(Most participants)は、安定した労働市場環境の下で物価上昇率が高止まりする場合には、2%の物価目標の達成のために利上げが必要になる、と指摘している。そのうえで参加者は、先行きの金融政策は今後得られる情報次第であるとした。

参加者が指摘する物価上昇リスクは3点あり、トランプ関税、原油価格高騰、AIブームによる需要増加だ。トランプ関税と原油価格高騰はサプライショックであり、一時的な現象だ。それらによる物価上昇の上振れはいずれ収まっていく。その間、予想物価上昇率や賃金上昇率に影響する、いわゆる2次的効果を生じさせ、持続的な物価上昇率の上振れにつながらないかどうかが、FRBの注目点となる。

AIブームが利上げを促す要因に

他方、AIブームによる需要増加がもたらす物価上昇圧力は、これらとは異なり、より持続的なものだ。今回、FOMCに議長として初参加となったウォーシュ議長は、AIによる生産性向上が物価上昇率を下振れさせるという点を今まで強調してきた。

長い目で見れば、AIの利用の拡大は、生産性の向上を通じて物価上昇率を下振れさせる可能性がある一方、失業の増加をもたらす可能性もある。これらは金融緩和を促す要因だ。

しかし短期的には、データセンターの建設ブームなどは、建設資材や人件費の上昇を通じて物価上昇率を押し上げる(コラム「米国のAI・データセンター投資ブームは物価高をもたらす」、2026年6月26日)。これは金融引き締め要因となる。

6月のFOMC直後には、ハト派とみなされてきたウォーシュ議長も物価安定の達成の重要性を強調したことなどから、次回7月のFOMCでの利上げ観測が浮上していた(コラム「利下げから利上げ方向に転じたFRBの金融政策方針:ウォーシュ議長のもと情報発信の見直しが進む」、2026年6月18日、「ウォーシュFRB議長は7月の利上げの可能性について言及を避け、物価安定の実現を強調」、2026年7月2日)。

その後発表された6月雇用統計が事前予想を下回る弱い数字であったことから(コラム「予想外に下振れた6月米雇用統計と為替介入の観測」、2026年7月3日)、7月の利上げ観測はやや後退した。それでも金融市場では、30%程度の確率で7月29日に利上げが行われることを現在予想している。さらに今年10月28日のFOMCまでに利上げが実施されることが、ほぼ市場に織り込まれている。

AIブームがもたらす物価上昇は、今後のFRBの金融政策を占ううえで、重要なテーマとなるだろう。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。