日米利上げ観測と日本財政拡大で10年国債利回りは3.0%に
9月1日の東京市場で、10年国債利回りは一時3.0%の大台に乗った。1996年9月以来、約30年ぶりの水準である。
8月に利回りは既に3.0%にかなり接近していたが、実際に3.0%台に乗る最後の後押しとなったのは、先週末のジャクソンホール会議での米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長の発言を受けて、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実施されるとの見方が強まったこと(コラム「中央銀行のコミュニケーション戦略④:ウォーシュFRB議長のジャクソンホール会議での発言」、2026年8月31日)、同じく9月の金融政策決定会合で、日本銀行が利上げを実施するとの観測が強まったことがあるだろう。
さらに、8月末に締め切られた2027年度一般会計の各省庁による概算要求の規模が今年度と比べて20兆円程度も膨らみ、財政環境が悪化するとの懸念が一層強まったことも背景にあるだろう(コラム「概算要求は過去最大の143兆円前後に:平時としては異例の規模で金融市場にも影響」、2026年9月1日)。
8月に利回りは既に3.0%にかなり接近していたが、実際に3.0%台に乗る最後の後押しとなったのは、先週末のジャクソンホール会議での米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長の発言を受けて、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実施されるとの見方が強まったこと(コラム「中央銀行のコミュニケーション戦略④:ウォーシュFRB議長のジャクソンホール会議での発言」、2026年8月31日)、同じく9月の金融政策決定会合で、日本銀行が利上げを実施するとの観測が強まったことがあるだろう。
さらに、8月末に締め切られた2027年度一般会計の各省庁による概算要求の規模が今年度と比べて20兆円程度も膨らみ、財政環境が悪化するとの懸念が一層強まったことも背景にあるだろう(コラム「概算要求は過去最大の143兆円前後に:平時としては異例の規模で金融市場にも影響」、2026年9月1日)。
協調介入を機に日本の経済政策への介入傾向を強めるトランプ政権
日本銀行が9月に利上げに踏み切る場合、それは原油価格高騰による物価上振れへの対応との側面が強いが、それに加えて、日米協調介入で日本の円安阻止に協力したトランプ政権からの利上げ要請に応えるもの、との見方も金融市場には根強い。
現在開催中の主要20か国(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ベッセント米財務相が、片山財務相、植田日銀総裁に対して、「財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に対して明確に示すことが重要」と伝えたと、米財務省高官(次官)がNHKのインタビューに答えている(コラム「G20財務相・中央銀行総裁会議:1ドル160円超えを受けて米国は日本の財政・金融政策に注文か」、2026年8月31日)。ベッセント財務長官は、7月末の日米協調介入直後にも、日本銀行の利上げへの期待を語っていた。
日本市場での円安・債券安が米国市場、あるいは世界の市場に与える悪影響を警戒するトランプ政権は、市場の安定に向けて日本の経済政策への介入傾向を強めていると推察される。
現在開催中の主要20か国(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ベッセント米財務相が、片山財務相、植田日銀総裁に対して、「財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に対して明確に示すことが重要」と伝えたと、米財務省高官(次官)がNHKのインタビューに答えている(コラム「G20財務相・中央銀行総裁会議:1ドル160円超えを受けて米国は日本の財政・金融政策に注文か」、2026年8月31日)。ベッセント財務長官は、7月末の日米協調介入直後にも、日本銀行の利上げへの期待を語っていた。
日本市場での円安・債券安が米国市場、あるいは世界の市場に与える悪影響を警戒するトランプ政権は、市場の安定に向けて日本の経済政策への介入傾向を強めていると推察される。
長期国債利回り上昇の主因は財政悪化リスクか:3%は未だ通過点
昨年8月から足元までの1年間に、日本の10年国債利回りは1.4%程度上昇した(コラム「長期金利の大幅上昇をもたらす財政悪化リスク」、2026年8月20日)。その要因を分析すると、期待インフレ率の上昇が0.5%ポイント程度寄与しているが、それを上回る利回り上昇要因となっているのは、「その他」要因であり、その中心は財政悪化リスクと推察される(図表)。
現時点ではなお、高市政権の積極財政姿勢は維持されているように見える。また、原油価格高騰による物価上昇率の上振れはしばらく続き、そのもとで日本銀行の利上げペースの加速観測は根強く残るだろう。
そうしたもとでは、10年国債利回りの3%は通過点であり、さらなる上昇リスクを残している。
現時点ではなお、高市政権の積極財政姿勢は維持されているように見える。また、原油価格高騰による物価上昇率の上振れはしばらく続き、そのもとで日本銀行の利上げペースの加速観測は根強く残るだろう。
そうしたもとでは、10年国債利回りの3%は通過点であり、さらなる上昇リスクを残している。
図表 過去1年間の10年国債利回りの変化と要因別寄与度推計(%ポイント)


3%台の10年国債利回りは長い目でみると持続可能でない
しかし、3%台の10年国債利回りは景気に抑制効果を生じさせる水準と考えられ、今後、経済への悪影響が徐々に顕在化していくことが予想される。この点から、3%台の10年国債利回りは長い目でみると持続可能でないと考えられる。
また、10年国債利回りが節目となる3%台に乗せたことで、国民の間でも財政悪化リスクが従来以上に意識されるようになり、高市政権もそうした世論の声にこれまで以上に配慮せざるを得なくなるのではないか。
さらに、トランプ政権からは、日本銀行の利上げとともに、円安・債券安を後押しする高市政権の積極財政政策に対して、軌道修正を求める圧力が今後強まることも予想される。
こうした環境のもとで、積極財政政策が徐々に軌道修正されていけば、財政悪化リスクは低下し、10年国債利回りの上昇にもいずれ歯止めがかかることが予想される。
しかし、それが実現するまでには、しばらく時間を要すると見られる。10年国債利回りは、向こう数か月など短期的には3.2%~3.3%程度まで上昇する可能性があるのではないか。
ただし10年国債利回りのさらなる上昇は、株価の下落など金融市場の安定を大きく損ねてしまう可能性があり、それが利回りの低下に転じるきっかけとなることも考えられる。
また、10年国債利回りが節目となる3%台に乗せたことで、国民の間でも財政悪化リスクが従来以上に意識されるようになり、高市政権もそうした世論の声にこれまで以上に配慮せざるを得なくなるのではないか。
さらに、トランプ政権からは、日本銀行の利上げとともに、円安・債券安を後押しする高市政権の積極財政政策に対して、軌道修正を求める圧力が今後強まることも予想される。
こうした環境のもとで、積極財政政策が徐々に軌道修正されていけば、財政悪化リスクは低下し、10年国債利回りの上昇にもいずれ歯止めがかかることが予想される。
しかし、それが実現するまでには、しばらく時間を要すると見られる。10年国債利回りは、向こう数か月など短期的には3.2%~3.3%程度まで上昇する可能性があるのではないか。
ただし10年国債利回りのさらなる上昇は、株価の下落など金融市場の安定を大きく損ねてしまう可能性があり、それが利回りの低下に転じるきっかけとなることも考えられる。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。