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木内登英の経済の潮流――「失速を回避する2020年内外経済の展望」

金融ITイノベーション事業本部  エグゼクティブ・エコノミスト  木内 登英

2019/12/16

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2019年の内外経済は、製造業を中心に弱い動きを続けました。しかし失速は何とか免れて、2020年には緩やかに持ち直すのではないかと予想します。その背景には、米国の金融緩和など各国での政策対応の効果と世界経済の構造変化があると考えます。

消費税率引き上げ後の国内経済指標は下振れ

10月景気動向指数(速報値)で、一致指数は前月比-5.6ポイントと、2011年3月以来の大幅な落ち込みとなりました。これを受けた内閣府の基調判断は、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に、3か月連続で据え置かれました。
一致指数の大幅悪化は、主に製造業の活動の弱さを反映しています。10月鉱工業生産は前月比-4.5%と大幅に悪化し、11月、12月の先行きの生産見通しも弱い状況です。また日銀短観(12月調査)でも、大企業製造業の景況判断DIは、前回比で-5ポイントと大幅に下落し、4四半期連続の悪化となりました。製造業部門に限れば、日本経済は景気後退局面にあると言って良いでしょう。この点は、欧米など海外についても同様です。
さらに、10月の個人消費関連指標が予想外に下振れたことから、「消費税率引き上げによる経済への悪影響が予想以上に深刻」との見方が浮上しています。確かに、9月には日用品を中心に消費税率引き上げ前の駆け込み購入が相応に発生しましたが、その反動減の発生は10月が中心と、比較的短期にとどまると予想されます。

経済対策の効果は小さくない

仮に製造業の悪化がさらに続けば、その悪影響は本格的に非製造業にも波及して、経済全体が失速状態に陥ることになるでしょう。しかし、実際には、そうした事態はなんとか回避され、年明け後には製造業の生産活動も緩やかに持ち直すと見ておきたいと思います。
その理由の一つは、経済対策の効果です。財政健全化の観点からその是非は厳しく問われるべきであると思いますが、12月5日に政府が閣議決定した経済対策は、年明け後の日本経済を下支えすることは確かでしょう。中央・地方政府が直接支出する国費の総額9兆円台半ば程度が、今回の経済対策の「真水部分」と考えられます。仮に9.5兆円規模の政府支出(公共投資と政府消費の合計)が実施された場合、内閣府の経済財政モデル(2018年度版)によると、実質GDPは1年間で0.8%押し上げられる計算となります。日本の潜在成長率と同程度でかなりの景気浮揚効果が、2020年度を中心に発揮されることになるでしょう。

鍵を握る海外需要に持ち直しの兆し

第2の理由は、輸出環境の安定化です。日本の製造業の活動を大きく左右する輸出には、下げ止まりの兆しが見られます。日本銀行が公表している実質財輸出は、7-9月期に前期比+1.8%と大幅に増加しました。
また足もとの主要な海外経済指標等を見ると、11月の中国の製造業景況感は大幅に改善し、景気底打ちを兆しています。また米国でも、クリスマス商戦で楽観的な見通しが強まっています。11月雇用統計でも、雇用者増加数は予想を上回る増加となりました。
さらに、今春以降の長期金利の大幅低下は、年末から年明けの時期を中心に自動車・住宅といった金利変動に敏感なセクターを刺激し、米国の家計支出を支えるでしょう。その背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)による合計0.75%の政策金利引下げが、その2倍程度の幅で長期金利を大きく低下させたことがあります。
こうした世界経済環境のもとでは、消費税率引き上げなどの国内要因によって、日本経済が本格的な景気後退局面に陥る可能性は高くなく、年明け後には、現在弱さが際立つ製造業も含めて経済全体に緩やかな持ち直し傾向が見られるようになるのではないかと考えます。世界経済全体も、緩やかな持ち直しが期待できるのではないでしょうか。

世界経済は失速しにくい構造に変化

世界経済が失速しにくい構造に変化していることも、今年の世界経済が失速を免れ、予想外の底堅さを見せた理由だと思います。2008年のリーマンショック(グローバル金融危機)後に、欧米経済は生産性上昇率、潜在成長率などその潜在力を低下させました。経済のダイナミズムが失われた結果、設備、在庫の過剰などが生じにくくなり、むしろ下方リスクへの抵抗感が強まった、という側面があるのではないかと思います。
こうした中、仮に2020年に世界経済がにわかに失速することが起こるとすれば、それは、低金利下で積み上がった金融市場の歪み、いわゆるバブルが一気にはじけ、金融市場が本格的な調整局面を迎えることがきっかけではないでしょうか。

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プロフィール

木内登英

エグゼクティブ・エコノミスト

木内 登英

経歴

1987年 野村総合研究所に入社
経済研究部・日本経済調査室に配属され、以降、エコノミストとして職歴を重ねる。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の政策委員会審議委員に就任。5年の任期の後、2017年より現職。


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