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2020年世界経済は大恐慌以来のマイナス成長見通しに

2020/04/14

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2020年の成長率見通しはマイナスへと大幅下方修正へ

4月14日に、国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しを発表する。IMFは今年1月時点での見通しで、2020年の世界経済の成長率を+3.3%と予想(2019年実績は+2.9%)していた。しかし、今回はこの見通しを大幅に引下げることが確実だ。

IMFのゲオルギエバ専務理事は9日の講演で、「新型コロナウイルスで、2020年の世界経済は大恐慌以来のマイナス成長になる」と指摘していた。リーマン・ショック(グローバル金融危機)後の2009年の世界の成長率は、IMFによれば-0.1%と僅かなマイナス成長だったが、2020年の成長率見通しは、より大きな幅のマイナスが見込まれる。

他方で専務理事は、景気悪化が数年続いた大恐慌時とは異なり、「基本線としては、経済の再開によって2021年は部分的に持ち直すと推測している」と述べた。米商務省のデータによれば、米国では大恐慌の1929~33年にGDPは26%減少した。

3月23日には、世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)は、2020年の世界経済の成長率がマイナス1.5%になるとの見通しを発表している。特に厳しいのはユーロ圏で、マイナス4.7%の大幅マイナス成長見通しだ。また、米国はマイナス2.8%、日本はマイナス2.6%である(当コラム「2020年世界経済はリーマン・ショック時を超える悪化の見通し」、2020年3月25日)。

中国の1-3月期GDPに注目

IMFは、その経済見通しの社会的影響力が大きいことに配慮して、IIFと比べてよりマイルドな見通しを出す傾向があるかもしれない。つまり、2020年の世界経済の成長率見通しで、マイナス幅はIIFよりも小さくなる可能性も考えられなくもない。

しかしながら、IIFが成長率見通しを発表してから既に3週間程度が経過し、その間、欧米では、経済活動を強く抑制するロックダウン(都市閉鎖)、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の政策は当初予定よりも延長されていることを踏まえると、IMFはIIFよりも大きな幅でのマイナス成長を予想するのではないか。

IMFの世界経済見通しの一つの問題点は、17日に公表される予定の中国の1-3月期GDP統計の結果を反映できないことだ。市場予想は前年同期比-6.0%程度であるが、同-10%という予想も一部にはある。

中国経済は2月に底を打ったと見られるが、その後の回復ペースについては、慎重な見方が次第に増えてきている(当コラム、「中国経済は緩やかに回復も自国だけ助かる道はない」、2020年3月30日)。

フィナンシャル・タイムズ紙が独自に算出している「中国経済活動指数」は、3月に上向きに振れたものの、足もとでは再度後退していることを示しており、経済活動はまだ、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準を40%近く下回っているという。

中国経済は世界の先行指標に

新型コロナウイルスの感染を封じ込めるための措置が、経済活動をどの程度悪化させるのか、強硬な措置がどの程度の期間で感染封じ込めにつながるのか、その後の経済活動の回復がどの程度のペースで進むのか。こうした観点から、中国の動向は他国にとって重要な先行指標となっている。

ムーディーズによれば、米国内ではすべての郡の8割がロックダウン下にあり、これはGDPの96%近くを占めている。また、米国内の1日当たりの生産は、閉鎖が相次いで発表された直前の3月第1週と比較して、既に約29%減少しているという。この状態が仮に6月いっぱい続く場合、4-6月期のGDPは年率換算で75%程度減少することになる。

各国で、新型コロナウイルスの封じ込めに時間を要すれば、経済の落ち込みはより大きくなり、世界経済の状況は、少なくとも短期的には大恐慌時に近づいていくのである。

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