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中間選挙で大敗すればバイデン大統領は2024年大統領選挙に不出馬か

2022/11/08

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民主党が上下両院の過半数を失うかに注目

11月8日に投開票を迎える2022年米中間選挙は、終盤戦で共和党有利の展開となっている(コラム「米国中間選挙でインフレが民主党の強い逆風に:選挙後も米国のドル高容認姿勢はしばらく継続」、2022年10月31日、「経済環境悪化で郊外白人女性が共和党支持に傾く(2022年米中間選挙):選挙後に米国金融市場は正念場か」、2022年11月4日)。

政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスの最新調査によると、下院の支持率では共和党が民主党を2.8%ポイント上回っている。調査に基づく同社の予測では、共和党が下院で15~45議席、平均で31議席増やす見込みだ。この場合、共和党の議席数は213~243議席(平均229議席)となり、下院の総議席435議席の過半数を民主党から奪う可能性が高いと見込まれているのである。

同じくリアル・クリア・ポリティクスによると、上院では共和党が民主党を4議席リードしている。ただし、8議席については未だ勝敗の見通しが立っておらず、共和党有利ながらも接戦が続いている状況だ。

こうした中、注目点は民主党が下院で過半数の議席を失い、ねじれ状態に陥るかどうかではなく、下院に加えて上院も共和党が制し、民主党が大敗するかどうかに移っている。

民主党大敗の場合にはバイデン大統領が再選を目指さない可能性

民主党が両院ともに過半数の議席を失えば、バイデン大統領の残り2年の政権運営は困難さを増し、早くもレームダック化してしまいかねない。そして、中間選挙で民主党が大敗すれば、それは1期目のバイデン政権に対する低い評価を反映したものと解釈され、2024年の大統領選挙でバイデン大統領が再選を諦めることにつながりかねないだろう。

現時点では、バイデン大統領は再選を目指す考えを表明しているが、高齢などのハンディもあることから、中間選挙で民主党が大敗する場合には、再選を目指さないことになる可能性がある。

2期目に再出馬を断念した大統領は、過去にも存在する。近年では民主党のジョンソン大統領が、党内のベトナム戦争反対派に突き上げられる形で、1968年3月に突然、同年秋の大統領選に出ないと表明した。また、1860年代以降、何人かの共和党大統領が1期目で退陣を決めている。

3州の民主党知事が次期大統領候補指名争いに参戦か

その場合、通常であれば、ハリス副大統領がバイデン大統領に代わって次期民主党大統領候補の最有力となる。実際、過去の副大統領は、党の大統領候補指名争いで勝利を収めてきた歴史がある。

しかし、バイデン大統領と並んでハリス副大統領の支持率も低迷している。一時は50%を超えていたハリス副大統領の支持率も、足元では40%ないしそれ未満にまで低下している。副大統領就任後にこれといった政治的な実績を残せていないため、彼女では共和党候補に勝てない、との疑念も民主党内で浮上している。

そこで、それ以外の民主党大統領候補として注目されているのが、民主党が強いカリフォルニア、イリノイ、ニュージャージー3州それぞれの知事、ギャビン・ニューサム氏、J・B・プリツカー氏、フィル・マーフィー氏の3氏である。3氏ともに、バイデン大統領が再選を諦めた場合には、仮にハリス副大統領が民主党大統領候補を目指す場合でも、対抗馬として名乗りを上げる可能性があるだろう。

トランプ前大統領が次期大統領選への出馬を正式表明へ

ところで、共和党のトランプ前大統領が、11月14日にも2024年の次期大統領選への出馬を正式表明する検討に入った、と米国のメディアが相次いで報じている。選挙前は表立った捜査を控える慣習があることから、トランプ前大統領は異例の早期の出馬表明によって、自身への米連邦捜査局(FBI)の捜査を封じようとしている、との見方もある。

中間選挙で民主党が大敗を免れる場合には、2024年大統領選挙で、バイデン対トランプの戦いに、人々の関心は移るだろう。他方、中間選挙で民主党が大敗する場合には、2024年大統領選挙でトランプ氏に対抗できる民主党候補が注目を集めることなるだろう。いずれにせよ、中間選挙後にはにわかに国民の関心は、2024年の大統領選挙に移ることになる。

中間選挙後は無党派層の取り込みを意識か

中間選挙後で民主党が大敗すれば、政治情勢はより混迷を強めることから、金融市場には悪材料となるだろう。ただし、議会での優位が僅差であることに根差すバイデン政権の脆弱さは、選挙前から存在しているため、金融市場の悪い反応もそれほど大きなものとはならないのではないか。

他方、中間選挙後で民主党が大敗すれば、バイデン大統領が2024年の次期大統領選に出馬しないとの観測が強まり、より強い大統領の誕生を期待する向きが、金融市場に好反応を生じさせる可能性も考えられるところだ。また、その場合、金融市場はトランプ前大統領の返り咲きを意識し始め、トランプ前政権の評価を改めて試みるようになるのではないか。

当面のバイデン政権の経済政策運営については、中間選挙の結果によって大きく影響を受けることはないだろう。ただし、次の大統領選挙に向けて無党派層の取り込みをより意識すれば、企業、富裕者に対する配慮も経済政策に組み入れるようになるかもしれない。消費者が望む物価高抑制に寄与するドル高の容認姿勢は当面は変わらないだろうが、今後、ドル高による輸出企業の競争力の低下が明確となれば、そうした企業に配慮して、ドル高容認姿勢を修正し始める可能性も考えられる。

それは、世界経済・金融市場には好材料となるだろうが、物価高を抑える姿勢が強い米連邦準備制度理事会(FRB)との間に軋轢が生じ、政府とFRBの足並みの乱れが、新たな金融市場の懸念となることも考えられるところだ。

(参考資料)
「焦点:米中間選挙、民主党大敗ならバイデン氏「再出馬断念」も」、2022年11月5日、ロイター
「トランプ氏捜査、中間選前に膠着 出馬表明でFBI封じか」、2022年11月6日、日本経済新聞

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