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日経平均株価が千円を超える大幅下落:日銀の政策修正を契機に円安・株高サイクルは逆回転を始めるか

2024/03/11

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株価大幅下落と強まる3月マイナス金利政策解除の観測

3月11日の東京市場では、日経平均株価が一時1,000円以上下落し、2月22日に34年ぶりに上回ったバブル期の最高値を一気に下回った。

足元まで急速に上昇してきた株価を調整させるきっかけとなったのは、先週末以来の円高進行だ。さらにその背景にあるのは、日本銀行のマイナス金利政策解除の観測と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が同時に強まったことである。

3月18・19日に開かれる金融政策決定会合で、日本銀行がマイナス金利政策を解除するとの観測が強まっているが、実際、その可能性は比較的高いと言えるだろう。

日本銀行が4月の決定会合まで政策変更を待つ理由としては、展望レポートの発表があると考えられる。展望レポートで新たに2026年度まで2%程度の物価上昇率が続くとの見通しを示すことで、2%の物価目標の達成という判断を強くアピールすることができる。

また、3月の決定会合での政策変更を避ける理由としては、3月は金融機関の決算期末であり、政策変更によって長期金利が上昇する場合には、債券含み損が拡大するなど、金融機関の財務環境を悪化させるリスクがあることが挙げられる。

しかしそのいずれも、日本銀行が4月まで政策変更を先送りする、強い誘因とは言えないだろう。金融市場が3月のマイナス金利政策解除の観測を強める中では、金融市場の期待を裏切って、金融市場に動揺をもたらすことを回避する観点からも、日本銀行が3月の会合でマイナス金利政策解除に踏み切る可能性は高まっていくのではないか。

マイナス金利政策解除後の政策の不確実性

日本銀行が早期にマイナス金利政策解除に踏み切る、との観測が浮上する中でも、年初から円安・株高の流れが続いてきた。足もとで円安・株高の流れに水が差された背景には、日本銀行が3月にマイナス金利政策解除に踏み切るとの観測が強まっているだけではなく、その後の政策運営についての不確実性が高まっていることが指摘できるだろう。

米国では、FRBの利下げ観測から長期国債利回りが低下している。2月に4.3%台まで上昇した10年国債利回りは、足もとでは4.0%まで低下している。そうした中、11日の市場で日本の10年国債利回りは0.7%台後半に逆に上振れているのである。

これは、単に3月のマイナス金利政策解除の観測が強まっただけでなく、8日に時事通信が、マイナス金利政策解除と同時にイールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃することを日本銀行が検討している、と報じたことによる(コラム「3月にも日銀がYCC撤廃と国債買い入れ額目標再導入との観測:量的引き締め開始までの時限措置」、2024年3月11日)。YCCを撤廃した後、長期国債利回りの安定を日本銀行が維持できるかどうかについて、金融市場に不安が生じているのである。

また日本銀行は、マイナス金利政策解除後もゼロ近傍の低金利は維持されると説明しているが、金融市場はそれを完全には信じ切れていないだろう。2%の物価目標達成を宣言した後に、日本銀行がマイナス金利政策を解除する場合、中立的な政策金利の水準は2%を上回ることになるため、比較的迅速に政策金利が中立水準まで引き上げられていくとの観測が燻ぶる。こうした不確実性が、長期国債利回りの上昇や円高進行を後押しする可能性がある。

株高をけん引してきた円安の流れは一巡か

物価高騰は金融緩和の効果を高め、それは円安を促す。そして円安は物価高をもたらす。こうして「物価高」、「金融緩和」、「円安」の3つの要因が相乗的に進むなか、それぞれが株価を大きく押し上げてきたと考えられる(図表)。

しかし、円安の流れには既に歯止めがかかったのではないか。円安が1ドル151円前後の水準で、3年連続で跳ね返されたことから、ここに円安に対する強い抵抗ラインが生じたと考えられる。

11日の下落が、日本株の本格的な調整の始まりを示すものかどうかはまだ分からない。ただし、株価上昇と強く連動している円安の流れが一巡したのであれば、少なくとも株価の上昇ペースも今後はかなり落ちていくのではないか(コラム「日経平均終値史上最高値更新を主導した3つの要因『物価高・金融緩和・円安』の循環に逆回転のリスクも」、2024年2月22日)。

図表 株高を支える3要素の相乗効果

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