物価上昇率の低下が個人消費の追い風に
2025年の日本経済は、年初に想定されていたよりも良好であり安定を維持した。トランプ関税の悪影響が当初懸念されたほどには表面化しなかったことが、その主な背景だ。15%の相互関税などは、日本の実質GDPを1年間で0.55%押し下げ、トランプ関税による海外経済の下振れという波及効果も含めると、日本の実質GDPは1年間で0.68%押し下げられる計算だ。
関税の悪影響は、短期的には企業の収益縮小で吸収され、想定よりも時間をかけて今後表面化してくる可能性には引き続き留意が必要だが、日本経済を一気に失速させる可能性はかなり低下した。
他方、2026年の日本経済の展望も比較的良好だ。その最大の理由は、過去数年続いてきた歴史的な物価高に沈静化の傾向が見られ始め、その結果、実質賃金の上昇が定着する可能性が出てきたからだ。これは、個人消費には追い風となる。
今年2月の消費者物価(除く生鮮食品)は、ほぼ4年ぶりに前年同月比で1%台に低下する可能性が高い(コラム「【衆院選の焦点⑧】物価高対策と賃上げを巡る議論:円安修正と成長戦略が鍵に」、2026年2月4日)。その後も、当面2%前後の推移を続けるだろう。
そして2月には、実質賃金が前年比でプラスに転じる可能性がある。春闘での賃上げ率が前年、前々年並みの5%程度となる一方、過去数年の物価高騰の最大の理由である円安が修正されていけば、1%台の消費者物価上昇率とプラスの実質賃金上昇率が、来年にかけて定着していくことが見込まれる。
日本の「しつこい円安」は容易には大幅に修正されないだろうが、2026年はトランプ米政権による強い政治介入を受ける米連邦準備制度理事会(FRB)が、ウォーシュ新議長の下で想定以上に金融緩和姿勢を強め、ドル安傾向を生じさせる可能性がある。その結果、円は対ドルでは円高に振れることが期待される。
関税の悪影響は、短期的には企業の収益縮小で吸収され、想定よりも時間をかけて今後表面化してくる可能性には引き続き留意が必要だが、日本経済を一気に失速させる可能性はかなり低下した。
他方、2026年の日本経済の展望も比較的良好だ。その最大の理由は、過去数年続いてきた歴史的な物価高に沈静化の傾向が見られ始め、その結果、実質賃金の上昇が定着する可能性が出てきたからだ。これは、個人消費には追い風となる。
今年2月の消費者物価(除く生鮮食品)は、ほぼ4年ぶりに前年同月比で1%台に低下する可能性が高い(コラム「【衆院選の焦点⑧】物価高対策と賃上げを巡る議論:円安修正と成長戦略が鍵に」、2026年2月4日)。その後も、当面2%前後の推移を続けるだろう。
そして2月には、実質賃金が前年比でプラスに転じる可能性がある。春闘での賃上げ率が前年、前々年並みの5%程度となる一方、過去数年の物価高騰の最大の理由である円安が修正されていけば、1%台の消費者物価上昇率とプラスの実質賃金上昇率が、来年にかけて定着していくことが見込まれる。
日本の「しつこい円安」は容易には大幅に修正されないだろうが、2026年はトランプ米政権による強い政治介入を受ける米連邦準備制度理事会(FRB)が、ウォーシュ新議長の下で想定以上に金融緩和姿勢を強め、ドル安傾向を生じさせる可能性がある。その結果、円は対ドルでは円高に振れることが期待される。
日中関係悪化の継続で日本のGDPは4兆4,300億円、0.72%押し下げられる計算
一方、2026年の日本経済の下方リスクとして注意しておかねばならないのは、日中関係悪化という地政学リスクだろう。昨年の11月に始まった中国政府による中国国民の日本への渡航自粛要請が仮に1年続く場合、2012年に同様の措置が取られた際の経験を基に試算すると、日本の名目GDPは1兆7,900億円減少し、0.29%押し下げられる計算となる(コラム「中国政府の日本への渡航自粛要請で日本の経済損失は1.79兆円、GDPを0.29%押し下げ」、2025年11月18日)。
さらに、年明け後には中国による軍民両用製品の輸出規制が始まった。それにはEV、スマホなどIT製品の製造に欠かせないレアアースも含まれるとみられる。2012年の尖閣問題後のレアアース輸出停止の経験を踏まえると、レアアース輸出停止が3か月続くとGDPは6,600億円減少、1年間続くと2兆6,400億円減少し0.43%押し下げられる計算となる(コラム「中国が日本にレアアース輸出規制を導入した場合の経済損失」、2025年11月28日)。
この2つが重なれば、日本のGDPは合計で4兆4,300億円減少し、0.72%押し下げられる計算となる。これは、日本経済を深刻な景気後退に陥らせるほどの影響ではないが、日本の実質GDPの平均的な年間成長率である+0.5%~+0.7%程度に相当し、1年間の成長を奪ってしまう程の規模である。また、トランプ関税がもたらす経済への悪影響と同程度の規模でもあり、そうした地政学的リスクによる経済への悪影響が2倍になる。
さらに、年明け後には中国による軍民両用製品の輸出規制が始まった。それにはEV、スマホなどIT製品の製造に欠かせないレアアースも含まれるとみられる。2012年の尖閣問題後のレアアース輸出停止の経験を踏まえると、レアアース輸出停止が3か月続くとGDPは6,600億円減少、1年間続くと2兆6,400億円減少し0.43%押し下げられる計算となる(コラム「中国が日本にレアアース輸出規制を導入した場合の経済損失」、2025年11月28日)。
この2つが重なれば、日本のGDPは合計で4兆4,300億円減少し、0.72%押し下げられる計算となる。これは、日本経済を深刻な景気後退に陥らせるほどの影響ではないが、日本の実質GDPの平均的な年間成長率である+0.5%~+0.7%程度に相当し、1年間の成長を奪ってしまう程の規模である。また、トランプ関税がもたらす経済への悪影響と同程度の規模でもあり、そうした地政学的リスクによる経済への悪影響が2倍になる。
日米首脳会談では日中関係、防衛費増額、日本の金融市場の不安定化などを議論
この点から、日中関係悪化の長期化を避けることは、重要な経済対策にもなる。実際には、それを実現する目途は現状では立っていない。高市首相は3月19日にトランプ大統領と会談する。そこでは、日中関係改善に向けた協力をトランプ大統領に求める可能性があるだろうが、中国との関係改善を重視しているトランプ大統領は、日本に強く肩入れすることはなく、米国の仲介による日中関係の改善が実現されにくいだろう。
他方でトランプ大統領は、国防総省の戦略文書で、すべての同盟国に対し防衛費をGDP比5%まで引き上げるよう明記した。日本の防衛費は今年度予算でGDP比2%であるが、これを5%まで引き上げるには、予算規模は約18.3兆円積み増す必要がある。これは、国民一人当たり15.3万円程度の追加負担となる(コラム「防衛費のさらなる増額と国民負担の増加」、2026年11月5日)。
高市政権が選挙結果いかんに関わらず、円安、債券安(長期金利)をもたらし国民生活に悪影響を与える積極財政姿勢を修正する可能性があるのではないか(コラム「【衆院選の焦点⑩】衆院選後の金融市場:高市トレードは変容を迫られる」、2026年2月6日)。トランプ大統領も世界の金融市場の不安定化の震源地にもなっている日本の金融市場の安定確保を高市首相に求める可能性があるだろう。
しかし、トランプ政権から早期の防衛費増額を求められれば、予算規模は大きく膨らんでしまう。それが円安、債券安(長期金利)を生じさせれば、その影響は米国にも波及し、ドル高、長期金利上昇が経済、国民生活に悪影響を与え、11月の中間選挙に向けたトランプ政権の支持率挽回の戦略を狂わせてしまいかねない。
この点を指摘することで、防衛費増額に時間的猶予を与えるようにトランプ大統領を説得できるかどうかも、先行きの日本の金融市場と経済を大きく左右するのではないか。
他方でトランプ大統領は、国防総省の戦略文書で、すべての同盟国に対し防衛費をGDP比5%まで引き上げるよう明記した。日本の防衛費は今年度予算でGDP比2%であるが、これを5%まで引き上げるには、予算規模は約18.3兆円積み増す必要がある。これは、国民一人当たり15.3万円程度の追加負担となる(コラム「防衛費のさらなる増額と国民負担の増加」、2026年11月5日)。
高市政権が選挙結果いかんに関わらず、円安、債券安(長期金利)をもたらし国民生活に悪影響を与える積極財政姿勢を修正する可能性があるのではないか(コラム「【衆院選の焦点⑩】衆院選後の金融市場:高市トレードは変容を迫られる」、2026年2月6日)。トランプ大統領も世界の金融市場の不安定化の震源地にもなっている日本の金融市場の安定確保を高市首相に求める可能性があるだろう。
しかし、トランプ政権から早期の防衛費増額を求められれば、予算規模は大きく膨らんでしまう。それが円安、債券安(長期金利)を生じさせれば、その影響は米国にも波及し、ドル高、長期金利上昇が経済、国民生活に悪影響を与え、11月の中間選挙に向けたトランプ政権の支持率挽回の戦略を狂わせてしまいかねない。
この点を指摘することで、防衛費増額に時間的猶予を与えるようにトランプ大統領を説得できるかどうかも、先行きの日本の金融市場と経済を大きく左右するのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。