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50周年記念増刊号 | vol.2

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50th 50周年記念増刊号

2030年のIoT

  1. 1.IoTの前身は1980年代から続くM2M
  2. 2.モノとコトのインターネットだからこそ、日本にも大きなチャンスが
  3. 3.「産業別村社会」の壁をどう乗り越えるか
  4. 4.利用者が牽引するIoTマーケット

桑津 浩太郎

桑津 浩太郎

コンサルティング事業本部
ICT・メディア産業コンサルティング本部 部長

かつてM2M(Machine to Machine Communication)と呼ばれていた機械と機械の通信は、モノ、コトを包含したIoT(Internet of Things)という新たなコンセプトへと進化しつつあります。書籍「2030年のIoT」(東洋経済新報社)では、生活、都市、産業、社会にまで影響を広げる可能性を秘めるIoTの今後の動向について、現在から2030年頃の未来を見据え、解説しています。
執筆者である桑津浩太郎に、この本で伝えたかったことなどを聞きました。

IoTの前身は1980年代から続くM2M

IoTがブームになりはじめたのは2012年くらいからですが、そのころに突然、IoTが生まれたというわけではありません。1980年代から、IoTの前身とも言うべきM2Mという機械間通信の取り組みが、特定の業種や産業では実際のソリューションとして提供されてきました。例えば、自動販売機の在庫データを調べる用途でM2Mの仕組みが利用されています。
インターネットを利用するという意味ではIoTは新しいコンセプトですが、M2Mをインターネット時代に合った衣に置き換えた感があります。IoTをバズワードにして業界を盛り上げていこうという動きに反対するわけではありませんが、IoTには携帯電話やインターネットなどのICT(Information and Communication Technology:広義の情報通信)領域とは違った側面があり、普及には時間がかかると考えられます。

IoTとM2Mの関係(出所:野村総合研究所)

モノとコトのインターネットだからこそ、日本にも大きなチャンスが

IoTは「モノとコトのインターネット」ですが、裏を返すと「人のインターネット」ではありません。私自身、過去20年ほどM2Mへの取り組みに関わってきたのですが、その経験から、IoTのICT領域との違いがよく分かります。決して先行きが暗いということではありませんが、放っておいてもどんどんマーケットが大きくなっていくという性質のものではないと考えています。
一方で、IoTには、日本の産業にとって、これまでとは違ったチャンスがあります。ITバブルのときには北米のベンチャー企業に負けてしまいましたが、今回は彼らに伍(ご)して戦っていくことができるのではないかと考えています。その理由は二つあって、一つが言葉の壁が低いこと、二つ目は、ロボットやAIに日本人が抵抗を持たないという点です。

IoT市場動向予測(出所:野村総合研究所)

「産業別村社会」の壁をどう乗り越えるか

桑津 浩太郎

日本はインターネット先進国で優れたコンテンツが多くありますが、言語の壁があることによって日本のプレゼンスは低いままです。しかしIoTは、モノとコトのコミュニケーションであるため、言語の壁が低いのです。これが日本にチャンスがあるという第一の理由です。
二つ目の理由はロボットやAIに対する意識の問題ですが、IoTではセンサーやプローブでモノをセンシングした後に、運搬などリアルなモノに紐付いた活動がついて回ります。ロボットやAIを利用して社会の生産性を上げることに対して、日本と違い、欧米では警戒感や恐怖感が強いのです。
もちろん、課題もあります。日本は、自動車村、通信村、金融村、流通村が独立して存在する産業別村社会です。電気自動車を例に考えると、電気自動車の充電情報をとるITのプロトコルは、自動車メーカーとIT機器メーカーが話し合って決めることが本来はベストですが、これまで日本では必ずしも十分に連携が取れているとは言えない点もありました。これが、どこまでスムーズにできるかが、日本の産業がIoTによって成功するポイントになります。

利用者が牽引するIoTマーケット

この本は、基本的にはIoTビジネスに関わる一般の企業ユーザーやビジネスマンの方々向けに、IoTの全体像や今後の動向について、現在から2030 年頃の未来を見据えて解説しています。
その一方で、コラム部分はICTに携わる方に向けて書いています。IoTは、通信事業者やソリューション事業者、コンピューターメーカー、ソフトハウスのための産業と思われがちですが、実はそうではありません。携帯やインターネットはICT事業者を中心にマーケットが伸びてきましたが、IoTもICT事業者が頑張れば伸びるかというと違います。IoTマーケットは利用者が引っ張るマーケットです。技術も大切ですが、産業や商慣習、ユーザー企業との関係性の方がもっと重要だというのがIoTの特徴です。流通や小売り、金融、社会インフラ、そういった分野の方々が活躍する余地が多くあるということも、読み取っていただければと思います。

プロフィール

桑津 浩太郎(くわづ・こうたろう)

京都大学工学部数理工学科卒業。専門は情報通信、ソリューション分野における事業戦略、マーケティング戦略支援。特に光通信、無線、ネットワーク管理などのインフラ領域。主な著書に『 ITナビゲーター』(東洋経済新報社)がある。

「2030年のIoT」
野村総合研究所 桑津浩太郎 著
東洋経済新報社 発行
2015年12月24日発行

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