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マイナンバーカード普及の先へ

執行役員 保険ソリューション事業本部副本部長 森 克也

#マイナンバー

2022/05/19

「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」2021年末に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に示された理念だ。政府は支援金給付など、新型コロナウイルス感染症対応の混乱で顕在化し、海外に大きく劣後した行政手続きの課題にメスを入れ、「日本ならではのデジタル化」を実現するとともに、その先に経済発展と社会的課題の解決を両立し、新たな価値を創出する人間中心の社会「Society5.0」に結び付けていく姿を描く。

マイナンバーカード普及に向けた動き

デジタル社会の実現に向けた一丁目一番地の施策が「マイナンバー制度・マイナンバーカードの利用促進」にあたる。個人識別のマイナンバーと、本人確認・認証手段のマイナンバーカードを区別した上で、マイナンバーカード利活用を行政手続きだけにとどめず、民間企業に広く開放することで、行政サービスと民間事業者のビジネスの恩恵を、国民一人一人が享受できる社会の実現が成長戦略の一つとされている。
マイナンバーカード交付枚数は昨年末5000万枚を超え、普及率は40%に迫った。政府はマイナンバーカードを行政のデジタル社会基盤にするため、マイナポイント追加付与で普及を加速させる意向で、2022年度末までにほぼ全国民に行きわたる世界を目指す。また今回の施策は単に普及ではなく「利活用」に力点を置いた。1万5000ポイントは「健康保険証としての登録」「銀行口座との紐付け」で付与する。
2024年度には、8100万枚発行されている運転免許証とマイナンバーカードとの一体化を予定しており、常に携帯するポジションを獲得する。またその前の2022年度にはマイナンバー機能(電子証明書)をスマホ搭載する予定で国民の利便性はさらに向上する。

マイナンバーカード利活用の促進

このマイナンバーカードを用いたサービスはどのようなものになるのだろうか。
一つ目は「基本4 情報」の活用である。マイナンバーカードには氏名・生年月日・性別および住所が搭載されている。オンラインでの本人確認は既に証券会社などの口座開設手続きで利用されているが、その先に「変更後の4 情報」を民間企業も知れるようになる。これまで顧客管理には自力で大きな負担を強いられてきたが、これからは社会基盤がそれを担う。
二つ目は「健康・医療情報」の活用である。これは政府が運営する「マイナポータル」を活用する。連携される情報は特定健診、薬剤処方、医療費など多くの情報を含む。政府はデジタル化の重点分野として「準公共分野(健康・医療・介護)」を置くが、膨らみ続ける社会保障費の圧縮と、人生100年時代に向けた未病・予防の進展のため個人の健康・医療情報を医療機関などに共有することを目的としている。これにより、重複検査や治療、薬剤処方の無駄が大きく減らせることに加え、社会保障の補完機能である生命保険ではより正確なリスク判定の可能性が高まる。生命保険は大数の法則にしたがって生命保険料を算定するが、さまざまな観点から保険料低減に努めてきた。個人の健康・医療情報が取得できれば、リスク判定の高度化が進む。特に薬剤処方情報が入手できれば、症病と薬剤の因果関係からこれまで保険に入れなかった人を受け入れられる可能性も出てくる。国民や医療機関、民間企業がマイナポータルを介して健康・医療情報へアクセス可能になった場合、世界的に見ても大規模かつ先進的な仕組みとなり、公衆衛生・予防医療領域の革新的なサービスの開発にもつながる。
マイナンバーカード利活用で多くの恩恵を受け、これを顧客サービスに転嫁させることで国民に健康で安心な生活を提供できるのは「生命保険」ではないだろうか。正確な健康・医療情報の活用で引受時の査定が高度化でき、加入者が増えれば、社会保障補完の役割はより一層の輝きを増す。また死亡情報に加えて入院歴と医療費が連携され、さらにマイナンバーカードに紐付く銀行口座を使えれば、保険金・給付金を素早く正確に漏れなく届けられ、国民は生命保険に対する絶対的な安心感を得られると同時に、保険会社は社会的使命を果たせる。また拡大する個人年金の支払いも、生存が自動的に確認できれば高齢の被保険者に役所に出向くなどの煩わしい手続きを求めなくて済む。これら関連する多くの事務が効率化・高度化され、顧客に対する生命保険サービスの担い手が増やせる。さらに個人の健康・医療情報は保険各社が競って展開する健康増進型保険・サービスのパーソナライズ化に資し、新たな近接事業として保険会社のチャレンジを誘発する可能性もある。健康寿命の延伸に貢献し、Society5.0で目指す「Well-Being(健康で豊かな生活)」の一翼を担うことに近づく。
いいこと尽くめのようなマイナンバーカード利活用だが、ハードルは決して低くはない。国民が変更後の住所や健康・医療情報を民間企業に連携するのか、という問題は残る。「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」のためには、マイナンバーカード利活用で「得られる果実は国民のもの」という風土醸成を行政と民間が一緒に進める必要がある。ようやく走り出した国のデジタル戦略が国民の理解を得て明るい未来を担うことを切に願う。

知的資産創造3月号 MESSAGE

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