目次
はじめに
近年、デジタルサービス領域においてUI/UXのようなデザイン要素の重要性は認識されているものの、デザインの価値を活かしきれず、具体的なアクションや成果に結びついていないケースが多く見受けられます。
デザインは、単なるビジュアル創出にとどまりません。デザインは顧客の視点に立ち、カスタマージャーニーや顧客のペイン、ゲインを詳細に分析し、サービスの体験価値を飛躍的に高める力を持っています。さらに、デザインによってサービスの世界観やビジョンを明確に可視化し、チーム内の一体感やモーメンタムを生み出します。これはプロジェクト参加者間の認識の一致を促し、創造的な価値創出の循環を加速させる効果をもたらします。
あなたの組織は、デザインの真の力をどのように理解し、活用していますか?本コラムを通じて、その答えを見つけ、DXの成功への道を切り開くインスピレーションを得ていただければと思います。
さらに詳しい情報は、2023年12月に実施したNRIウェビナー「DXを成功に導くためのデザインパワー~顧客志向を組織に浸透させる5つのポイント~」の動画にてご覧いただけます。ウェビナー動画では簡易的にデザイン成熟度診断も実施・解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
ビジネス変革を推進するデザイン~事例を通してみるその力
デザインパワーはビジネスにおいて革新的な変革を推進する重要な役割を果たしています。それは、単なる美的要素の追求を超え、ビジネスの本質的な変革を促す力を持っています。ここでは、デザインの力がビジネスにどのような影響を及ぼしたか、事例のひとつを紹介します。
事例:新規サービスのプロジェクト推進
これは、NRIが新しいデジタルサービス「Knowledge rabbit※(ナレッジラビット、以下「ナレラビ」)」のプロジェクト初期段階で、素早いプロトタイピングとビジュアル化を実施した事例です。
このアプローチにより、チーム内の議論を活性化させ、迅速な意思決定を可能にしました。具体的には、初期のコンセプトやデザイン案を可視化することで、プロジェクトチームの認識を一致させ、新しいアイデアの創出を促進しています。
実際に、ナレラビは迅速に市場へ投入され、顧客からのポジティブなフィードバックを得ることができました。デザインパワーにより、プロジェクト全体の関係者に創造的な影響を与え、組織内のデジタルイニシアティブの推進力となったよい事例です。
出所:ウェビナー資料より一部抜粋
この事例から、デザインが単に「見た目を良くする」以上の役割を果たし、デジタル領域のプロジェクト推進においても重要な役割を担っていることが明らかになります。(詳細なプロセスとその効果については、ウェビナー動画でさらに深く掘り下げています)
しかし、このような成功例はまだまだ少ないのが現状であり、デザインがビジネスに十分に活かされていないケースが圧倒的に多いです。活用できている企業は3割にも満たないという調査結果もでています。なぜこのような問題がおこるのでしょうか?
次のセクションでは、デザインがビジネスにおいて十分に活用されない理由を探ります。
デジタル活用の現実と課題~デザインが活かされない3つの理由
デジタル時代のビジネスにおいて、デザインは顧客体験を形作り、ブランド価値を高める重要な要素です。しかし、多くの企業がデザインを十分に活用していない現実があります。ここでは、デザインがデジタルビジネスで活かされない主な理由を3つ紹介し、それぞれの課題について掘り下げます。
理由1:「意匠」からの脱却不能
多くの企業は、デザインを単なる「見た目」の改善と誤解しています。この固定観念は、デザインの本質的な価値を見落とし、その戦略的な活用を妨げます。
理由2:機能優先の開発文化
デジタル開発において、機能性が顧客体験よりも優先される傾向があります。この結果、UI/UXの観点が後回しにされ、顧客中心のアプローチが失われます。
理由3:デザイナーの役割の誤解
デザイナーは単に画面デザインを考える役割だと誤解している企業がいまだに多いです。この従来の見方は、デザイナーの戦略的な貢献を制限し、イノベーションの機会を逃がします。
出所:ウェビナー資料より一部抜粋
これらの課題を理解し、克服することは、デジタル時代のビジネスにおいて不可欠です。しかし、これらの壁をどのように乗り越えれば、組織全体でデザインの価値を最大限に活用できるのでしょうか?次では、デザイン活用への組織改革について探求します。
デザイン活用による組織変革~顧客志向を組織文化に浸透させる5つのポイント
デザインを組織文化に浸透させることは、ビジネスの成功に不可欠です。このセクションでは、企業がデザインを効果的に活用し、顧客志向の文化を築くための5つの重要なポイントを紹介します。また、実際にあなたの組織が現在どの段階にあるのかを確認する方法や、必要なアクションについてもお話します。
組織変革に必要な5つのポイント
ポイント1:戦略 - 経営とデザインの接続 ポイント2:プロセス・ルール - デザイン価値の統合 ポイント3:ツール・環境 - 一貫性あるデザインシステムの構築 ポイント4:人材育成・体制 - デザイン思考の普及 ポイント5:文化醸成・啓蒙 - デザインマインドの浸透
出所:ウェビナー資料より一部抜粋
企業がどうやってデザイン活用への組織改革を進めるかについて、これらの5つのポイントは、その仕組みづくりの基礎を形成します。
デザイン成熟度診断の活用のススメ
自社のデザイン活用の現状を理解し、改善への道を示すには、これらの5つのポイントについて、各々の要素における自社の立ち位置の把握が必要です。NRIでは、このニーズに応えるため「デザイン成熟度診断」を開発しました。
デザイン成熟度診断を活用することで、組織のデザイン成熟度を4段階で評価し、強みや弱みを明確にします。この診断は、約35項目の質問に回答することで、組織内のデザイン活用状況を詳細に分析し、具体的なアクションプランを策定できます。
あなたの組織は現在、デザイン活用においてどの段階にあるのでしょうか?この診断を通じて、組織の現状を把握し、具体的な改善策を講じましょう。さらに深い理解を求める場合は、ウェビナー動画をご覧いただくことをお勧めします。動画では、これらのポイントについてより詳細な解説が行われ、実践的な知識を得ることができます。
最後に
本レポートを通じて、デザインのビジネスへの影響力、デジタル時代におけるデザインの活用の重要性、そして組織内でのデザイン文化の浸透方法について探求してきました。デザインが単なる美的要素ではなく、ビジネス成長と顧客体験の向上に不可欠であることが明らかになったでしょう。
また、NRIではアジャイルCX・UXデザインに関する以下のサービスを提供しています。
デザインの力を最大限に活用し、ビジネス成果を加速させるために、これらのサービスを活用し、組織内のデザイン文化の成熟を目指しましょう。
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DXに必要な知識を体系的にまとめた学習コンテンツや、生成AIを活用した学習サポート機能を備えたナレッジシェアリングサービスです。
https://www.knowledge-rabbit.nri.co.jp/
執筆者情報
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