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デザイン経営

design management

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デザイン経営とその意義

デザイン経営は、デザインを、企業価値を上げるための重要な要素と位置付ける経営スタイルです。デザイン経営において、デザインは企業の長期的なビジョンを実現しようとする意志の表現として捉えることができます。それは単に見た目の美しさだけでなく、お客様の潜在的なニーズを見つけ出し、新たな体験価値を生み出す営みをも指します。この考え方を企業のあらゆる顧客接点や組織へ広めていくことで、ブランドの強化や競争力あふれるイノベーションの創出を目指します。

なぜ今、デザインが求められるのか

現在、多くの業界で市場が飽和状態にあり、製品やサービスを機能や価格だけで差別化することが難しい時代です。企業は技術を鍛えつつ、製品やサービスを改良していますが、それだけでは、お客様に十分に価値を届けられているとは言えません。今、求められているのは、新しい「体験」の提供です。そうした「体験」を具現化し、お客様に伝えるアプローチとして、デザインの重要性が高まっています。

デザインで体験価値を創るとは

「デザインで価値を創る」とは、製品の見た目を美しくするだけでなく、ユーザーの視点に立つことで体験価値を高め、問題解決につながる製品やサービスを継続的に提供することを意味します。具体的には、ウェブサイトでの商品検索から配送、利用、問い合わせ、廃棄までの全過程で発生するユーザーのニーズに対して、自社のビジョンに基づいた製品・サービスの設計・制作・提供を行うことで、体験価値を向上させていきます。

デザインを活用したアプローチは多種多様ですが、最近特に注目されているのがデータに基づくアプローチです。デジタル技術の進化により、企業と顧客をつなぐデジタルチャネルが拡大し、ユーザーの行動やニーズをリアルタイムで把握することが可能となりました。これらのデータを企業が的確に活用することで、企業の差別化につながる特有のカスタマー・エクスペリエンス(CX)やユーザー・エクスペリエンス(UX)を提供することが可能となります。顧客個々のニーズに合ったコンテンツを適切なタイミングで提供できれば、ブランドは顧客にとって身近で欠かせない存在となります。更に、データを用いて顧客像を具体化し、見逃していたニーズを発見し、新製品開発のプロトタイピングに活かすことも、デザインを活用したアプローチの一部です。

日本企業のデザイン経営の現状

多くの日本の企業はデザインの重要性を認識しつつも、そのパワーを十分に生かし切れていないのが現状です。主な課題は、経営者から現場のメンバーまでの全員がデザイン経営の具体的な手法やノウハウを持っているわけではないことと、デザインの役割や位置付けが組織内で明確にされていないことです。日本企業によく見られる縦割り組織では、各部門間のコミュニケーション不足がデザインの取り組みを断絶化させがちです。

デザイン経営を導入するためには、組織文化の変革とリーダーシップの存在が欠かせません。また、自社のビジョンに基づいてデザイン経営を一貫して実践するための制度・組織体制・プロセス・育成・コミュニケーションなど多角的な視点が求められます。

具体的には、まずは組織のビジョンと方向性を明確にし、それをデザイン活動の指針とすることが大切です。経営チームにデザイン責任者を設け、全社的に生み出されるデザイン価値をマネジメントする必要があります。さらに、デザイン思考の手法やツールを導入し、ユーザー視点の問題解決を図ったり、事業戦略立案の早期段階からデザインに関与させるプロセスを整備したりすることも重要です。そして、多角的な視点や斬新なアイデアをもたらす活動としてデザインの浸透を進めるためには、デザイン活動に必要なスキルや知識の獲得を通じて人材を育て、また、デザインの成果や効果を定期的に評価し、理解や関心を高めるためのコミュニケーションを行わなければなりません。

経営から現場までの全メンバーが、デザインの生む価値を理解し、日々の業務に取り入れられるようになったとき、デザイン経営によって新たな価値が創造されるようになります。

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