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NRI トップ サステナビリティ 有識者ダイアログ 2014年度 CSRダイアログ(有識者1)

サステナビリティマネジメント

2014年度 CSRダイアログ(有識者1)

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2014年7月1日、2名の有識者をお迎えして、「CSRダイアログ」を開催しました。ダイアログでは、企業価値担当役員の室井雅博と、NRIグループの企業価値や事業の重要性などについて意見を交わしました。いただいた貴重なご意見は、これからの経営、CSR活動に活かしていきます。

出席者

(五十音順/所属、役職は2014年10月時点)

写真:鈴木 均氏

鈴木 均氏

((株)国際社会経済研究所 代表取締役社長)

元NEC CSR推進部長。現在はサステナビリティに貢献するICTの可能性を調査研究し政策提言するシンクタンクの責任者。

写真:寺中 誠氏

寺中 誠氏

(東京経済大学 講師)

東京経済大学教員。国際人権NGOの活動を通じて、ビジネスと人権に関する国連の指導原則の影響を取り上げている。

写真:室井 雅博

室井 雅博

(野村総合研究所 代表取締役副社長)

2014年4月から企業価値向上を担当し、CSR活動や環境配慮など、中長期の視点から事業を通じた社会課題の解決を目指す。

企業価値、CSR経営について

室井:

当社はこれまで、誠実な事業運営を通じてお客様やその先におられる消費者の方々に貢献しようという意識で仕事をしてまいりました。しかし、世の中が大きく変化している中、これまで以上に、「企業価値」について正面から考える取り組みが必要だと感じております。
例えば、当社のビジネスは製造業などに比べると環境や社会に及ぼす負の影響は小さいと考えていますが、地球環境問題についても明確な経営方針や取り組みを開示していくことで、説明責任を果たしていくことが、重要だと考えております。

寺中氏:

企業価値という点に着目したことは良いことだと思います。企業はそもそも何のために存在するのかという哲学的な問いを経営の場で議論しなければ本当のガバナンスは出来ないと思います。

室井:

IR活動の中で投資家の方々と対話しておりますと、大手の機関投資家の中には中長期志向の投資家の方々も増えてきているように感じます。企業報告の分野でも、財務情報に加えて、CSR、サステナビリティ、環境問題など非財務情報を織り込んだ「統合報告」が議論されています。短期的な企業業績だけを追い求めるのでなく、中長期的に企業価値を着実に向上させようとしている企業を評価していこうという動きが、着実に進んでいるという気がします。

鈴木氏:

企業価値につながる仕組みのひとつにNRIの統合リスクマネジメントがあると思います。これにCSR的な要素、すなわちステークホルダーの声や関心事を織り込み、CSR重点テーマとの整合性がとられるとよいと思います。CSRの視点から重要なリスク領域をマッピングし、それらをリスクマネジメント体系の中に組み込むことが、CSRの経営への統合となります。

情報システム(IT)事業のマテリアリティ(重要性)について

写真:鈴木 均氏

鈴木氏:

社会への影響と、経営・事業からの重要性・戦略性の両面から、NRIの企業価値にとって最も重要性が高いものは、社会インフラを支えているIT事業といえます。このIT事業に対して、情報セキュリティ、事業継続性(BCP)、環境負荷の大きく3つの分野で対応する必要があります。 情報セキュリティの領域では、社会インフラ等を支える情報システムへのサイバー攻撃が世界的に問題になっており、こういった攻撃から情報やシステムをどのように守っていくかということが極めて重要な課題です。

室井:

金融・保険・流通など多くのお客様企業の重要な情報システムをお預かりしているNRIにとって、情報セキュリティとBCPは会社の生命線そのものであり、存続にかかわる問題なので、最優先で取り組んでいます。特に最近、日本においてもサイバー攻撃が大きな脅威になっています。NRIグループには、NRIセキュアテクノロジーズという、情報セキュリティの専門子会社があり、300名のセキュリティ技術者が活躍しています。彼等はNRIグループが運用するシステムを防衛するだけでなく、政府によるセキュリティ基準作りのお手伝いをしたり、金融機関へのサイバー攻撃情報を相互交換するための社団法人を作ったりして、日本における高度情報社会の安全性向上のために、貢献しています。

鈴木氏:

そのようなNRIの事業を支えている重要なステークホルダーはバリューチェーンにおけるパートナー企業です。情報セキュリティ面からも、パートナー企業に働く従業員のモラルや志気を高め、信頼性を確保することが大切です。

室井:

どれほど厳格な基準を作っても、最後は人の問題です。一人の過失や故意が重大な事態に繋がる可能性があるので、パートナー企業への教育や監査、良好なコミュニケーションなど、しっかり対応していくことが必要だと考えます。
その上で、重要なデータは当社の直接の管理下でのみ使用し、テストなどで使用するデータについても個人情報が一切漏れないように対策をとっています。

鈴木氏:

パートナー企業の情報セキュリティ対策は相手が納得する形で一緒に進めていくことが理想的です。そういう面でも、NRIにはリーディング・カンパニーを目指してほしいです。

写真:寺中 誠氏

寺中氏:

情報セキュリティの分野での問題に、プライバシーの権利があります。
現代社会において、プライバシーの権利は、私的な情報の権利という従来の概念を超え、デジタル時代の人権というべき概念になっています。
従来の人権侵害は暴力など物理的に被害を受けるものでしたが、現代の抑圧・弾圧は情報を介して行われます。こうした人権侵害にどのように対抗するかということが企業にも求められています。

室井:

プライバシーの権利に関しては、前提として、当社はお客様の情報を請負契約でお預かりしていますが、当社自身が事業者として保有している個人情報は殆どありません。
しかし、プライバシーを巡る世の中の動向を注視し、顧客企業に適切な提案・提言を実施していくことが必要だと思います。

写真:室井 雅博

室井:

環境負荷の問題に関して、データセンターの電力使用の増加に伴うCO2排出が社会的に問題となっていますが、当社のデータセンターの電力利用効率は日本トップレベルです。
現在、野村證券をはじめ証券会社66社に、当社の共同利用型の情報システムサービスをご利用いただいております。各社個別の情報システムから共同利用に切り替えることにより、業界全体を通じたシステム費用の削減や業務の効率化など、社会コストの低減に繋がると同時に、環境負荷を大幅に減らすことができます。

寺中氏:

電力使用に伴う環境負荷は、経常的な環境負荷を減らすほうが、一過性の環境負荷を減らすことに比べて効果が大きいのです。データセンターの効率化や共同利用型システムの普及は、日本全体で経常的な環境負荷を減らす効果が大きいと思います。

BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスについて

鈴木氏:

NRIはアフリカや中東などでBOPビジネスに関して提言をしています。そういった分野でNRIのノウハウを活かした情報システムに関わるビジネスを立ち上げたら素晴らしいと思います。例えば金融システムのノウハウを活かして、途上国のBOP層を経済メカニズムの中に組み入れるようなソリューション・ビジネスを、具体的な形でチャレンジしてほしいです。

室井:

シンクタンクでもある当社にとって、自主的な調査・研究や提言によって社会のお役に立って行くことは非常に重要です。様々な研究成果を、書籍・論文・マスメディア・フォーラムなどの場で発表し、評価いただいています。しかし、グローバルな活動が活発なコンサルティング部門と比較して、ITソリューションの方は、まだまだ日本国内のビジネス中心ですので、将来、ご指摘のような途上国の情報システムにも取り組めるよう、頑張りたいと思います。

鈴木氏:

いきなりアフリカというと距離感がありますが、事業でアジアに力を入れているのであれば、そこでITを使ってBOP層に貢献できるような仕組みづくりに試験的にチャレンジするのがよいと思います。
また、海外でBOPビジネスを進める際には、現地で長くコミュニティ開発に関わっていて信頼を得ているNGO等との連携が必要となり、現地の感覚を養う上でもよい勉強となります。

寺中氏:

これまでITを利用した海外のBOPビジネスでは、都市部のスラム街などでITリテラシー教育を始めて、そこからシステムエンジニアが育ち、いずれシステム会社が立ち上がるというストーリーがいくつもあります。 そういうところにITで貢献できる余地はあると思います。

室井:

何か一つでも「NRIはあの国で、こんなITソリューションで貢献しているね」と言えるものを、探していきたいですね。 本日はありがとうございました。

(2014年10月22日公開)

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