公共セクター
都市のマネジメント
財政状況が悪化する中、人口減少に伴う市街地の空洞化、都市の骨格をなすインフラの老朽化などの問題に、包括的に対処していくことが求められています。
今後ますます、市街地の空洞化、都市インフラの老朽化などの問題が深刻化
日本の地方都市や大都市郊外部では、人口減少に伴い、市街地の空洞化が進みつつあり、今後ますます深刻になると考えられています。そのような中、都市機能や公共交通を維持し、住民の生活を守っていくためには、市街地の「コンパクト化」を図り、密度を維持していくまちづくりが求められています。
また、都市の骨格をなすインフラも老朽化が進み、コンクリートの剥落や地面に埋設した管路の破損、最悪の場合は橋梁の崩落など、クライシスのリスクが高まりつつあります。政府の財政状況が厳しさを増す中、安全を確保しつつ、ライフサイクルコストを最小化するインフラマネジメントの実施が喫緊の課題となっています。
数十年先の都市の姿を客観的に見通し、将来のあるべき姿を描くことが必要
都市もインフラも、数十年といった長期のタームで計画し、実現を目指していくものです。そのためには、将来の動向を正確かつ客観的に見通し、将来のあるべき姿を描いた上で、それを実現するためのアクションプランを描いていく必要があります。
また、アジアをはじめとする発展途上国は、日本の都市が過去にたどってきた成長プロセスを、より速いスピードで歩んできており、日本が現在直面している課題に、近い将来、直面することが予想されます。
日本は「課題先進国」として、最新のテクノロジーを活用して都市の課題を解決するためのソリューションを開発し、諸外国に展開していくことが期待されます。
■ 都市インフラのマネジメント計画の検討プロセス
NRIは、政府による都市・インフラに関する中長期的なビジョン及びそれを実現するためのマネジメント計画の策定をご支援します。
都市のあらゆるマネジメント課題の解決を幅広く支援
NRIは、都市のマネジメントに係る課題の解決を、幅広く支援することができます。
都市の無秩序な拡大を抑制し、適切なマネジメント計画を立案する際には、まず、(1)人口、経済、都市機能、交通、防災、行政運営等の視点から、都市の現状及び将来の動向を分析し、(2)都市の課題を解決するために、中長期的に目指すべき都市構造を具体化します。そして、(3)その都市構造を実現するために、都市機能の立地や居住を誘導する区域を設定し、(4)設定した区域に都市機能や居住を誘導するために政府がとるべき施策オプションを導出します。その際には、IoT・AI・自動運転・EMSなど、最新のテクノロジーを活用することも検討します。
なお、都市のマネジメントは、行政のイニシアティブだけでは、持続的な仕組みになりません。民間企業のビジネスチャンスを創出しつつ、官民が連携して取り組むスキームを構築することが重要です。
「成長可能性都市ランキング」を通じた、都市の産業創発力の見える化
NRIは、世界の成長都市の分析を行った結果、都市の産業(新たなビジネスを産み出す力)を高めるためには、「①多様性を受け入れる風土」、「②創業・イノベーションを促す取組」、「③多様な産業が根付く基盤」、「④人材の充実・多様性」、「⑤都市の暮らしやすさ」、「⑥都市の魅力」という6つの要素が必要であるという結論を導きました。
この考え方に基づき、国内100都市を対象とした「成長可能性都市ランキング」を発表し、都市の産業創発力の現状と将来のポテンシャルを可視化しました。
このランキングを見ることで、各都市のマネジャーは、自らの都市の強み・弱みを、定量的に把握することができ、強みを強化し、弱みを克服する施策を検討することができます。このランキングは、都市経営を行う上でのKPIとして活用することができます。NRIは、このランキングを活用し、日本国内の都市の政策立案を支援しています。
■ NRI「成長可能性都市ランキング」
防災/BCP構築
地球温暖化による災害激甚化が予想される中、グローバルにサプライチェーンを展開する企業の経営存続リスクが増大しています。
世界規模でネットワーク化が進む社会では、災害の影響は想定以上に拡大する
地球温暖化の進展に伴い、気象災害の頻発化、激甚化が進んでいます。一方で、流通やメーカー企業によるサプライチェーン展開が世界規模で進んでおり、災害による影響は想定以上に拡大する恐れがあります。実際に、東日本大震災(2011年日本)やタイ洪水(2011年)時の自動車生産の停止、台湾集集地震(1999年)時のパソコン部品価格の高騰など、高度にネットワーク化された社会が被災した場合の影響の大きさを痛感する事態となりました。たとえ自社の拠点が被災を免れても事業が継続できなくなる恐れがあります。そのため、平時からサプライチェーンにおけるリスクを可視化して、対応戦略を練ることの重要性が増しています。
リスクを可視化して、事業継続のための対応戦略を構築することが重要
既往災害の教訓から、サプライチェーンを広く深く把握しておくことの重要性が認識され、平時からサプライチェーンの構造把握を進めようという動きが見られます。しかし、大災害に備えるためには、それだけでは十分とは言えません。地震や水害等のハザードマップに基づき、自社やサプライヤーの工場が被災するリスクや電気・水道や交通網などの社会インフラの寸断が事業活動全体に及ぼす影響を分析し、サプライチェーン全体の停止リスクを予測し、どこにボトルネックがあるのかをあらかじめ可視化しておくことが重要となります。これにより、平時からクリティカルなボトルネックの解消を進めるとともに、災害時に素早く復旧して影響を最小限にとどめることが可能となります。
■ グローバル・サプライチェーンの事業継続マネジメント支援
NRIは、GISを利用した被災リスクシミュレーションの実施から、官公庁や企業の防災対策の策定やBCP構築、復旧・復興までご支援します。
「リスクの可視化」への取り組みを支援する被災シミュレーションサービス
NRIは、災害リスクマネジメントに関するコンサルティングとソリューションの両面における豊富な実績があります。例えば、日本政府の中央防災会議が取り組む巨大地震や大規模水害時の被害想定などのシミュレーション、防災政策の策定支援などのコンサルティングのほか、地震発生後15分以内に被害の早期評価結果を官邸危機管理センターや内閣情報集約センターに伝達するDisaster Information System(DIS)の開発・導入が挙げられます。
そこで培った専門知識と技術を利用して、企業の本社や生産拠点、サプライヤーの被災状況や従業員の参集可能性を評価する「被災シミュレーションサービス」や全国に整備された震度観測ネットワークと連動して、サプライチェーン寸断リスクを早期評価する「サプライチェーンリスク評価システム」を提供しており、大手自動車メーカーや自動車部品メーカーによる平時の減災対策やサプライチェーンリスク管理ツールとしてご利用頂いております。
Board BCP~有事に直面する正解のないトレードオフへの経営判断を支援
NRIは、重工業A社に対し、“Board BCP”構築の支援を行いました。“Board BCP”は、初動マニュアル等を中心とした従来型のBCPと異なり、会社として統一された意志決定の集合体であり、経営者を交えた作成プロセスにこそ価値があるといった考え方に基づいています。
災害時には、施設、要員、システムなどの重要リソースが限定されるため、「何を捨てて、何を守るのか?」といったトレードオフへの回答が即座に求められます。そのためには、普段から守るべきモノとレベルの「目標設定」と「リスクの可視化」により、目標と現状とのギャップを分析して、事業継続の課題を見極めることが重要です。また、有時に経営陣の価値観が異なると、全社のあるべき行動がとれない恐れがあるため、何を重視するのか、あらかじめ経営陣の価値観をそろえておくことが重要です。“Board BCP”は、このような有事に直面する正解のないトレードオフへの経営判断を実現するツールとして機能します。
■ NRIの防災/BCP構築コンサルティングのソリューションメニュー
政府機関へのPPP導入支援
PPP(Public Private Partnership)の導入ニーズが世界的に高まっていますが、導入により解決すべき政策課題は、各国で異なります。
PPP導入は手段であり、各国の状況に応じた導入目的の整理が必須
主に途上国、新興国等の成長国では、旺盛なインフラ整備
需要を政府財源だけではとうてい支えきれず、民間資金によるインフラ投資が活発化しています。PPPは主に新規のインフラ整備に不可欠な仕組みとして認識されています。
一方、先進国を中心とする成熟国では、既設の老朽化したインフラ、あるいは非効率なインフラ事業の経営改革や、政府部門からのオフバランスが課題となっており、PPPはこれらの課題を解決するためのツールとして有効です。
ニーズの違いに応じたPPPスキームの設計や事業者選定が必要
「成長国型」のPPPでは、民間企業や金融機関の資金の活用を前提にしつつ、政府間開発援助(ODA)も含めた複合的なスキーム組成や、技術協力による人材育成の取り組みを組み合わせることで、速やかなインフラ整備と質の高いサービス提供の両立が可能となります。
一方、「成熟国型」のPPPでは、公営事業を政府部門からオフバランスするにあたり、民間へのリスク移転や投資家による参画が重要となります。加えて、従来の枠組みを超えた海外展開等の取組も想定されるため、そのための組織づくり、ガバナンス構築も不可欠です。
■ 「成長国型」と「成熟国型」で異なるPPP導入の目的
NRIは、クライアント特有の条件を理解し、客観的立場から最適なPPPソリューションを提案するだけでなく、その実現までを支援します。
PPP案件形成の各段階で必要となる支援メニューを一気通貫で提供
NRIは、日本の経済協力制度と、各国の行財政制度の双方を熟知した上で、幅広い分野の施設やインフラ開発におけるPPP案件形成の各段階で必要となる支援を行います。
第1に、施設内容を検討するマスタープラン策定では、施設コンセプト、必要機能、規模といった基本的性能を規定する条件の検討とともに、立地調査や、整備費・維持管理費の積算も行います。
第2に、事業手法の検討では、施設の整備・運営手法や、具体的なスキーム、資金調達方法や発注単位(複数施設のバンドリング等)を検討します。入札参画意向を収集し、財務シミュレートによりPPP導入効果も算定します。
第3に、事業者を選定するアドバイザリ業務では、RFP(Request for Proposal)、資格審査/落札者決定基準の作成や、提案書評価に加え、選定委員会の運営や議会説明資料の作成まで伴走支援し、契約締結を実現します。
海外・国内での様々なインフラ開発支援の経験を基に、実践的ソリューションを提供
NRIは、日本の主要都市で発生していた過密や渋滞、環境破壊といった都市問題を解消するため、ウォーターフロント開発、新たな交通インフラ整備(LRT等)、中心市街地の再開発等の提案や調査を数多く行ってきました。その経験を活かして、海外でも、交通・都市・衛生・集客施設等の幅広い分野で、インフラの計画策定を支援しています。
例えば、事業手法の検討を支援した鉄道プロジェクトでは、上下分離方式により、トンネルや橋梁等のインフラ部分を官の資金(現地政府予算+円借款)で、車両や電機設備等の運行部分を民間資金で調達するスキームを提案しました(左下図)。
アドバイザリ業務を支援した東南アジアの案件では、豊富な支援実績から得られた官民の利害対立ポイントに関する知見を基に、想定される論点を事前に整理し、双方のニーズを踏まえた落とし所を提案することで、事業の実現を強力に支援しました(右下図)。
■ 事業手法の検討による提案例
■ アドバイザリ業務のソリューション例
非市場戦略/ルール形成戦略支援
新興国市場の攻略のためには、ルールや仕組みに影響を及ぼし、事業がしやすい環境を創ることが不可欠です。
ルールや仕組みの未整備を「課題」ではなく「好機」と捉えることが必要
日本企業が新興国に進出する場合、法制度の未整備や不透明な運用により、事業が上手くいかないケースが多く見られます。法令遵守を重視する日本企業は法制度が不明確だと事業展開が鈍りがちです。他方、欧米や中・韓企業はこれを好機と捉え、自国や自社に有利な法制度・ルールを導入し、ビジネスがしやすい環境を作り出すために、政府・業界団体等に働きかけを行っています。
どんなに優れた製品・サービスを持ち、効果的なマーケティングを行っても、ビジネスを行う上でのルールや仕組みが不利だと、苦戦を強いられます。日本企業もビジネスがしやすい事業環境を戦略的に創り出すことが求められます。
事業環境を創るには、効果と負担を見極めた上で3つの方策が有効
ビジネスをしやすいルール・仕組みを戦略的に作るには、大きく3つの手法があります。1つ目は法規制そのものを作る・変えること。これは競合商品の市場からの排除などの強力な効果が期待できる半面、実現には多くのリソースや強力なパートナーが必須です。2つ目はISO等の標準・ガイドラインを作ること。これは製品・業界のスタンダードを作り、競合の商品との明確な差異化ができる反面、実現には数年を要し、普及に向けて各国政府や企業への働きかけや広報活動等の取り組みや、国家間の協力が必須です。3つ目は、日本流の仕組みを持ち込むこと。日本のビジネスモデルを持ち込むことで新規参入に成功したり、現地リソースの囲い込みが期待でき、必ずしも大企業でなくても成功する場合があります。いずれも、官民連携がポイントになります。
■ ルール・仕組みの導入方法と効果、具体例
NRIは、リサーチ能力や政府機関とのネットワークを活用し、非市場戦略の策定・実行支援を通じて、新興国における有利な事業環境づくりをサポートします。
社会への洞察、政府とのネットワークを活かした非市場戦略の策定・実行支援
法制度やルールを有利に作り変える上で効果的なのは、非市場戦略の策定と実行です。非市場戦略とは、「自社にとってより良い事業環境を創ることを目的とし、非市場の主体(政府・市民・NGO・メディア等)に働きかけを行う戦略」です。
自社の抱える海外展開のどの課題について、法制度やルールを作り変える取り組みが効果的かを分析・特定した上で、どのような情報をどのようなストーリーで非市場のステークホルダーに訴えれば目的を達成できるか、戦略を立て、実行します。この戦略の策定・実現の鍵は、①非市場戦略の策定と経営計画への組み込み、②実施組織・人員の明確化、③自社の取り組みが社会課題の解決に貢献することの客観的データによる説明、④効果的な官民連携の実現にあります。NRIでは長年の調査研究で得た知見と、政府・行政機関等とのネットワーク、戦略策定のコンサルテーション能力を一体的に提供し、非市場戦略の策定と実施を総合的にサポートします。
ケース : 日本流の仕組みの導入を官民連携で実現
NRIは、交通インフラ企業A社に対し、同社の交通制御システムのロシアへの導入の支援を行いました。ロシアでは交通渋滞という社会問題の解決のために、交通制御システムの導入が求められていましたが、実績が確認できるまでは導入しないというロシア政府の姿勢が壁となっていました。そこで、NRIは、日本の政府機関によるコストの一部負担を前提とした官民連携による「実証」の枠組みを活用することでこの壁を乗り越え、さらには、ロシア政府から導入試験や調査に係る許認可をいち早く取得することにも成功しました。実証の結果として大きな渋滞削減効果が認められ、A社のシステムは複数の地方政府に導入されることになりました。
上記以外にも、NRIでは政府の海外展開支援や新規施策の実行支援業務を日本政府から多数受託し、現地政府機関や業界団体等に働きかけを行うことで、日本流の仕組みをうまく導入できるよう企業の現地政府機関等へのセールスをサポートしています。
■ NRIの非市場戦略策定・実行支援
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