どうする?日本の空き家問題!
#経営
2017/04/20
「両隣のうち片方は常に空き家」の社会
――2030年代には、日本の空き家率が30%を超える可能性があると予測しています。
総務省「平成25年住宅・土地統計調査」によれば、2013年の空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.5%と、過去最高水準になっています。私たちの研究では、何らかの対策をとらなければ、2033年には空き家率は30.4%を超える見通しです。
――空き家率が30%を超えるということは、どんな状況でしょうか。
3軒に1軒が空き家ということですから、自分の家を中心に考えると「両隣の家のうち片方が空き家」という状態です。誰も住んでおらずいつのまにかゴミが投げ込まれている、いまにも崩れそう、不審者が入り込んでいる……。空き家率が30%を超えるというのは、治安上、また防災面から見ても、決して好ましい状況ではありません。
問題回避に向けた3つの考え方
――そのような状況を回避するために、今から何ができますか。
考え方として、端的には人口を増やす――逆に言えば人口減少を食い止める方策がもっとも効果的ですが、とても難しく、即効性に乏しい。次に、住宅をこれ以上増やさないという考え方。方法としては、①空き家を取り壊す「除却」を進める、②新築を制限する、③住宅用途以外の用途に変える、があります。ただ②についても、経済に及ぶ影響からむやみに制限するのではなく、新しく住宅を建てる場合には古い住宅の除却を義務づける、新築制限エリアを設けるなどの工夫が必要だと思います。
――空き家の除却を進める具体策はありますか?
平均的な戸建ての解体にはおよそ100万円かかるため、なかなか除却が進まないのが現状です。一部の地方自治体では解体費用を補助する措置がとられていますが、対象となる空き家はごく一部ですし、補助金にも限りがあります。また、固定資産税・都市計画税の特例措置など問題もあり、一筋縄ではいきません。
そこで「新築権」という考え方を導入してはと思っています。新築権は、既存住宅を除却することで得られる、住宅を新築するための権利です。例えば、売却見込みのない古い家を持つ人が、100万円をかけて家を除却し新築権を得る。その権利を、マンションの分譲を行うデベロッパーなどに100万円で販売すれば、解体費用を捻出できます。こうした仕組みをつくることで、除却を進めることはできないかと考えています。
多様な暮らし方ができる社会に
――国の政策は、どうなっていますか?
2016年3月に出された日本の「住生活基本計画」では、少子高齢化や人口減少社会に合わせた住宅政策を示す中で、既存住宅の流通と空き家の利活用の促進を新たな政策ポイントとして挙げています。併せて、除却などを推進することによる空き家増加の抑制も目標に掲げられたことからも1、国としてこの問題を重要視していることが分かります。
――私たち自身がしていくこと、できることはありますか?
日本では基本的に、住宅は1世帯に一つと考えられていますが、仕事やライフステージ、あるいは季節によって居住する家を変えられるようにするなど、私たちが住まい方や暮らし方をもっと自由に考える必要があります。無論、そうしたことは個人の意識改革だけで実現できることではないので、多様な生活スタイルを選択しやすい社会の仕組みにしていくことが大切だと思っています。
要するに、人口が伸びなくなった時代に、人口が伸びることを前提に作られたこれまでの社会システムを、いかに変えていくか、というところにコトの本質があり、空き家問題は、そのチャレンジの一つととらえるべきだと思います。日本の試みは、これから少子高齢化社会を迎える諸外国に適用される、グローバルスタンダードな解決策になる可能性を秘めています。だからこそ新しい概念や、既存の考え方を打ち破る仕組みを作り出せたらと思っています。
[1]「住生活基本計画」では、空き家増加の問題に対し、賃貸・売却用等以外の「その他空き家」数を2025年までに400万戸程度に抑えるとしている
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