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NRI トップ NRI JOURNAL 「資産所得倍増プラン」に貢献する証券業務のデジタル化

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「資産所得倍増プラン」に貢献する証券業務のデジタル化

執行役員 証券ソリューション事業本部副本部長 原 敏文

#証券

2022/11/21

日本は、グローバル社会の中で生産性が著しく低い、と言われ続けて久しい。最も代表的な生産性指標である労働生産性の国際比較データ(日本生産性本部発表の「労働生産性の国際比較2021年」)を見ると、2020年の日本の1 人当たり労働生産性は78.655ドルと前年から3.9%下落し、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中28位で、1970年以降最も低い順位であった。
こうした状況を打破するための切り札として期待されているのが、「社会のデジタル化」である。日本政府も、2021年9 月にデジタル庁を発足させ、同年12月には官民共通の指針となる「構造改革のためのデジタル原則」を策定し、さらに22年6 月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定するなど、いよいよ本腰を入れてデジタル化を推進し始めたところだ。

日本の証券業務におけるペーパーレス化の難しさとデジタル化推進に向けて

筆者が長年担当している証券業界は、紙ベースで運用される業務が現在でも多数残っているので、デジタル化の推進によって生産性が向上する余地が極めて大きいのではないかと推察される。しかし他方で、証券業務は多数の法令諸規則によって手続きが厳格に定められており、証券会社と顧客との間で書面のやり取りが義務づけられている諸手続きが非常に多い。金融当局も規制緩和を進めてはいるものの、金融取引には「公正性・公平性の確保」という、生産性とは別次元で重視しなくてはならない大原則があるため、デジタル化の推進もどうしても段階的にならざるを得ない。
たとえば「公平性確保」という点では、特に高齢者を中心にパソコンやスマートフォンを利用できない人たちが依然として存在するため、無条件にペーパーレス化を進めることは難しいという側面も考えられる。
しかし、日本という国の国際競争力が急速に低下していくという危機的な状況の中にあっては、もはやそのような理由をつけて逡巡しているわけにはいかない。民間金融機関としても、デジタル化について法令諸規則の改正を待つだけでなく、自分たちの努力で可能なところから進めていく努力が欠かせないと考える。
デジタル先進国であるスウェーデンやフィンランドといった北欧諸国では、民間金融機関各社が連携し、ATMや店舗などの金融インフラそのものを共通化することで、企業経営の効率化を図っている。北欧の金融機関は超低金利の環境下でも比較的高い収益性を維持できているといわれているが、その要因の一つとして、こうした金融インフラの効率化・省人化の取り組みが奏功しているのではないだろうか。日本も大いに参考にすべきであろう。
現在のように、日本の金融インフラが金融機関個社間でバラバラの状況を放置したままでは、仮に法令諸規則が改正されたとしても、各社が個別にデジタル化を進めるだけという、これまたさらに非効率な対応をすることになりかねない。共通化できるところは事前に進めておくことで、法令諸規則が改正された際に効率よく、かつ迅速なデジタル化の実現が可能になるのだ。

投資家の利便性を向上させるための効果的なデジタル活用

ところで、証券会社のシステム・オペレーション領域は、投資家の取引を直接支援する「フロントオフィス領域」と、顧客の証券口座を管理する「バックオフィス領域」に大別できる。証券会社にとって、フロントオフィス領域は各社の営業戦略とも密接に関係するため、今後も各社が個別に開発・運用を進めていくべきである。
逆に、法令諸規則で規定されたコモディティな領域をカバーするバックオフィス領域に関しては、証券会社間で可能な限り共通化することにより、証券業界全体の生産性を向上させることがますます重要になる。そして、その共通化された領域を次々にデジタル化していくことが、一般投資家と証券会社との間の手続きのハードルを下げ、双方の利便性向上にもつながることであろう。
このように、デジタルの活用を通じて投資家の利便性を飛躍的に向上させていくことが、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の根幹をなす「貯蓄から投資へ」という考え方、そして「資産所得倍増プラン」の実現にも貢献する、と筆者は考える。
証券会社向けソリューションを手掛けている我々野村総合研究所(NRI)も、証券業界全体のさらなる効率化に尽力することで、「資産所得倍増プラン」に貢献していきたい。

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